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レザーのジャケットはおって♪
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旅路での恋(8)のつづき
 
 
さゆりが援助交際・・売春をしてる・・・?
 
そう聞かされてもまったく信じる事が出来ませんでした。
旅行でオーストラリアまで来て・・こっちでわざわざそんな事をする理由が考えられません。
 
「何言ってるんだ!そんなの嘘に決まってるだろ!」
 
僕は男が言った言葉を全否定する思いで言いました。
 
「ハハハ・・・そりゃ信じられないだろうな!でもマジなんだぜ・・なぁさゆりちゃん?」
 
男がそう言いながらさゆりの方を見ました。
さゆりは手で顔を覆って泣いています。
 
「さゆり・・・本当なのか?」
 
そう尋ねてみましたがさゆりは泣いているままで反応が無く、否定するそぶりもありません。
そのさゆりの泣き崩れている姿を見ていると、さゆりを信じきる思いに自信が持てなくなりました。
そしてなんだかなんとも言えない感情が込み上げて来て・・・怒りとか悲しみとかのはっきりした思いではありません。
とにかく今は目の前にいる男2人が目障りに感じたので、僕は40歳くらいの男の方の胸ぐらを掴んで言いました。
 
「もうお前ら帰れ!」
 
すると相手の男は・・
 
「何だお前やるのか!」
 
そう言われて顔面を殴ろうかとも思いましたが、一緒にいるさゆりに迷惑をかける訳にもいけません。腹立たしい思いを我慢して拳を出さずに、胸ぐらを掴んでいた手でそのまま相手を突き飛ばしました。
 
「痛っ・・」
 
相手の男は尻餅をついて倒れました。
威勢とは裏腹に以外と虚弱な感じで、もう1人の男もおろおろして向かってくるそぶりも無く、実は2人ともケンカ慣れしてなさそうな感もありました。
 
「とにかく・・もうお前ら帰れ!」
 
僕は改めてそう言うと突き飛ばされた方の男が悔しそうな顔をして、手をついている地面に転がっている半分が割れて欠けているビールの空き瓶をいきなり僕に投げつけてきました。
 
「あっ!」
 
油断している所に突然投げてこられたのでよける動作が遅れました。
ビール瓶の割れて欠けている部分が刃物ように鋭利に尖っていて、その部分が僕の左腕をかすってしまったのです。
 
「ガシャーン」
 
男が投げたビール瓶が地面に落ちて割れる音と同時に左腕に熱を感じました。
腕を見てみると綺麗に5cmくらい程切れており血が吹き出ています。
 
「ツカサ!! 大丈夫!?」
 
さゆりの心配する声が聞こえます。
切れ方が悪かったのかあまり痛みは感じませんでしたが、出血は少々驚く程多くありました。
 
「やばいですよ!逃げましょう!」
 
相手もその出血を見て驚いたのか、30歳くらいの男が瓶を投げて来た男に逃げるように言うと、男2人は走って逃げ出し・・あっという間に居なくなってしまいました。
 
「ツカサ!・・速く病院に行かないと!!」
 
さゆりは泣きながらもとても心配そうに僕の所に駆け寄り、ピンク色の水玉模様のハンカチを出血している僕の左腕当ててくれました。
 
「大丈夫だよ!全然痛くないし・・しばらくすれば血も止まるよ」
 
「何言ってるの!!こんなに血が出てるのに・・・ちゃんと病院に行って治療しないとダメだって!!」
 
さゆりは心配してくれて病院に行くように言ってますが、僕は絶対に病院には行けないと強く思っていました。
 
それはなぜかというと・・オーストラリアで保険証も無い渡航者の外国人である自分がこの切られたような傷で病院に行くと、病院側が不信に思って警察に通報する可能性が高いです。
そうなれば警察からの事情聴衆が必ずあります。
もしさゆりの売春の話が本当であれば、最終的にこの傷の加害者のあの男2人にも事情聴衆されて、さゆりが逮捕されてしまう可能性が出てくるのです。
オーストラリアは日本よりも売春などに関する規制・法律が厳しくて、もし外国人による犯罪で逮捕されると日本に強制送還はまだマシで、最悪オーストラリアの刑務所に入れられる事もあり得ます。
 
ですから何があっても病院に行く訳には絶対いけません。
 
「さゆり・・本当に大丈夫だから!こんな外国で病院の世話になんかなりたくないし・・出血だって血が固まってくればすぐに止まるよ」
 
「でも・・ちゃんと治療をしないと・・・」
 
「本当に大丈夫!ハンカチでずっと押さえておけば・・・ほら、もうそんなに血も出てないし・・」
 
実際、傷はそんなに大した傷ではありませんでした。
痛みもほとんど無くて出血もしばらくすれば止まるように思えました。
 
 
心配してくれるさゆりを慰留して、とりあえず散歩道のベンチに2人で座りました。
さゆりはハンカチで左腕をずっと押さえ続けてくれています。
 
そしてまた涙を流しながら・・・
 
「本当にゴメンね・・・あたしのせいでこんな事になって・・・本当にご免なさい・・」
 
さゆりはずっと謝ってます。
 
そんな彼女を見ていると・・・
 
もちろんとても気にはなっていますが、売春の事に関して色々と聞く気にはなれませんでした。
 
 
旅路での恋(10)につづく・・・
 
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旅路での恋(7)のつづき
 
 
スキューバダイビングをする事が出来なくなって落ち込んでいたさゆりを励まし、エスプラネードという散歩道を歩きながらせっかくの2人きりの時間を過ごしていた所に、怪しげな観光客ぽい男2人がニヤニヤしながら声をかけてきました。
 
「さゆりちゃん・・探したよ〜、また会いたくなってね・・」
 
日本語での言葉・・・見た目からも間違いなく日本人の40歳くらい男と30歳くらいの男の男性2人でした。
 
「ねぇ、さゆりちゃん・・また頼むよ」
 
男2人のうちの割と背が低い40歳くらいの方がさゆりに話かけていました。
それを聞いて僕はオーストラリア旅行に来ている親戚か何かと思いましたが、さゆりはその男2人と目も合わせようとせずにまるで無視しているようです。
 
そしてさゆりが・・・
 
「ツカサ、行こう・・・」
 
と、まるで男2人から逃げるように僕の手を強く引いて着た道を引き返そうとしました。
 
「待てよ!さゆりちゃん・・・何?その連れの男も客?それとも彼氏?」
 
その怪しげな40歳くらいの男が意味の分からない事を言っていますが、さゆりは聞こえないかのようにまったく反応をせずうつむきながら足早になってます。
僕は客と言われて・・さゆりは自分がツアーコンダクターか何かを男2人に話しているのかと思っていました。
 
「ねぇ、さゆり・・・いいの? あの2人、親戚とか知り合いじゃないの?」
 
「・・・・」
 
さゆりに尋ねてみても返事がありません。
 
「さゆり、なんかさゆりのこと呼んでるみたいだし、俺にかまわず話してきていいよ」
 
そう言うとさゆりは・・・
 
「いいの!全然関係ないし話すことなんかないから!もう早く帰ろう!」
 
なんだか感情的になってさゆりは言うし、とにかくあの2人から離れようとしているので、僕も帰ろうとすると・・・
 
男2人が駆け寄って来て
 
「おい待てよ!こっちはまたちゃんと金払ってお願いしようとしてるんだぜ!それに新しい客も連れて来てやったし」
 
40歳くらいの男がさゆりの腕を掴んで強引に引っ張ろうとします。
 
「やめてよぉ!もう関係無いから離して!」
 
さゆりは本当に嫌そうに手を振りほどこうとしているので
 
「おい!やめろよ!」
 
僕は男の腕を掴んでさゆりのから振りほどきました。
 
「なんだ!お前は? 今相手してもらってる客なのか?」
 
40歳くらいの男がこっちを睨みながら言っている事の意味が分かりませんでした。
 
「客!?客ってなんだよ?」
 
そう僕が聞き返すと男はニヤニヤしながらさゆりの方を見ました。
さゆりは涙目になってうつむいています。
 
「さゆりちゃん・・こいつは何も知らないんだねぇ?もしかして彼氏とかなの?」
 
「お願い、やめて!もう構わないで!」
 
さゆりが泣き出して言いました。
 
どうやらこの男2人は当然ながらさゆりの親戚とかでもないし、さゆりにとっては非常に迷惑な存在のようでした。
 
そこで僕は・・・
 
「おい!さゆりが嫌がってるだろ!だからもう帰ってくれよ!」
 
そう言うと男は
 
「お前さゆりの彼氏なのか?」
 
彼氏か?と聞かれて「そうだ・・」とも答えたかったのですが、自分のさゆりに対する想いも込めて
 
「俺はさゆりとは今はまだ仲の良い友人だけど、さゆりに対しては好意も持っているし大切な人だ!」
 
そう言うと、男は大笑いしました。そして・・・
 
「そうなのか!?それはけっこうな事だな!是非頑張って欲しいし、ついでにいい事を教えてやろうか?もしかしてもう知ってるのかな?」
 
「なんだ!?」
 
「このさゆりはな・・・援助交際をしてるんだぜ!・・わかるか?・・・売春!ヤラセて男から金を取ってるんだぜ!実際俺もこの前に買った客だしな」
 
それを聞いて僕はしばらく理解が出来ませんでしたが・・・言葉の意味が分かって来た時、まるで頭をハンマーで殴られた様な衝撃を受けました。
 
 
旅路での恋(9)につづく・・・
 
旅路での恋(6)のつづき
 
 
溺れたさゆりを助けるためにプールに飛び込み、死に物狂いで泳ぎました。
スキューバダイビングの演習用のプールなので深さは3mあります。
飛び込んでからまったく息継ぎもしないでさゆりの元へたどり着きましたが、さゆりは底まで沈んでいてとても苦しそうにしていました。
すぐに体を抱き寄せて上まで連れて行こうとしましたが水圧も強くて思った以上に力が必要で、一瞬手間取っていると講師と監視員の手がさゆりの体を補助して持ち上げ、すぐに水上まで上がりました。
そしてプール脇にゆっくりと寝かせました。
 
「さゆり!大丈夫か!?」
 
さゆりは意識はしっかりとあり激しい咳をしながら飲んでしまった水を吐き出していたので、とりあえずは大丈夫そうでしたが、それとは別に胸の辺りを手で押さえ・・・とても痛そうで苦しそうでした。
 
「どうした!?胸が痛いのか?」
 
溺れた事によって痛んでいるのではなくて、溺れてしまった原因のような感じでした。
それを見て監視員が救急車を呼ぼうとしましたが、その時さゆりが・・・
 
「・・くすり・・・・」
 
と、苦しそうにも言葉を絞り出しました。
 
「薬? 薬がいるのか?」
 
改めて聞いてみると・・
 
「・・バッグの中に・・入ってるから・・・」
 
そう聞いて薬が必要だと悟り、講師と一緒にダッシュで更衣室まで走りさゆりのバッグごと持ってきて、中を探してみると割と大きめの薬用のケースが見つかり、中には3種類のカプセル錠剤がありました。
 
「さゆり!どれ?」
 
と、聞くと・・・
 
「・・全部・・・」
 
監視員が持って来たミネラルウォータのペットボトルで薬を飲ませると、しばらくしてからさゆりは落ち着いて来ました。
 
そして講師と監視員が
 
「とりあえず病院に行こうか?」
 
と病院に連れて行こうとするのですが、さゆりは
 
「大丈夫です。薬飲めば治りましたし、病院は行かなくて大丈夫です」
 
と病院に行くのが嫌がっているようでもありました。
 
病院に行くのを拒みさゆりは学校内の休憩室のベッドで休みました。
僕も付き添いをしようと一緒にいましたが、さゆりから
 
「もう全然大丈夫だから、ツカサは試験を続けて受けてて・・・あたしもすぐに行くから」
 
さゆりが笑顔で「心配ない」とそう言うので、僕はとりあえず10分間の立ち泳ぎの試験をクリアして終わらせてから戻りましたが、さゆりはもう試験を受け直そうとプールへ向かっていました・・が、講師は今回は中止だと言ってさゆりを引き止めています。
 
さゆりは執拗に再試験を受けさせてくれとお願いしていますが、講師はかたくなに拒否していました。
それでもさゆりは泣きながらお願いしていますが、さゆりの身体の事を考えれば講師が中止させるのも当然でした。
 
どうやらさゆりが言うには、生まれつき心臓が弱くてたまに痛みが起きた時にだけ薬を飲んでいるそうです。今回はたまたま泳いでいる時にその痛みが起きたという事のようでした。
 
僕もさゆりの所へ行き今回のスキューバダイビングのライセンス取得を諦めるように説得しました。
さゆりは泣き崩れていましたが、試験を合格出来ておらず講師がOKを出してくれるはずもないですし、この後に船でグレートバリアリーフに出発する前には非常に細かい身体検査もあります。
こういう事があってさゆりが海で20mまで潜るのを、医者が了承してくれるはずも無いでしょう。
 
 
それからさゆりを連れてユースホテルまで戻りました。
 
もう時刻は夕方になり日もだいぶ落ちて来ました。
 
さゆりはまだ泣いています。
 
「さゆり・・・俺も今回は海に行かないからまた今度改めて一緒にライセンス取ろうよ」
 
僕自身、さゆりを置いて1人でグレートバリアリーフの海に行く気はまったくありませんでした。
 
でもさゆりは・・・
 
「なんで!?あたしはいいからツカサだけ行って来てよ!あたしなんかに付き合うことないよ」
 
「でも俺はさゆりと一緒にグレートバリアリーフで潜るのを楽しみにしてたし、一人なんかで行ってもおもしろくないからいいよ・・・だからまた来年でも再来年でもいつでもいいから、また2人で一緒に来ようぜ!」
 
「そんな・・あたしのせいで・・せっかくツカサは授業も演習も頑張って合格したのに、それにお金まで無駄になって・・・」
 
「本当に気にしなくて大丈夫だって!また今度ゆっくり時間かけて頑張ろうよ!」
 
僕はなんとかさゆりを励まして、本当に心からまた2人で来ようと思ってました。
 
「・・・でも・・あたしはもう来れないよ・・・」
 
さゆりがそう呟きました・・・。
 
「えっ!?もう来れないって?」
 
そう聞き返してみましたが、さゆりは無言のままでうつむいていました。
 
それからしばらく沈黙が続きましたが、急にさゆりは笑顔になって
 
「お腹すいたねぇ、何か食べに行こう♪」
 
いつもの笑顔で明るくて元気なさゆりに戻ったようでした。
 
 
それから2人で近くのレストランで楽しく食事をして、帰りには夜の海岸沿いの散歩道(エスプラネード)を2人手をつないで歩きました。
 
所がそんな2人の幸せな空間を邪魔するかのように、何やら前方からニヤニヤとした怪しげな男2人がこちらに向かって近づいて来ました・・・
 
 
旅路での恋(8)につづく・・・
 
旅路での恋(5)のつづき
 
 
さゆりと再会する事が出来、さゆりと共に過ごす事になりました。
 
同じユースホテルですが部屋は別部屋。
お互い起床してからは軽く食事をして、ケアンズの街を散歩したり観光地を巡ったりで色んな場所で出向き楽しみ、夕方からは食材を買い物に行ってから2人で料理。
僕はパスタやカレーやオムレツ等を作り、さゆりは肉じゃがやハンバーグや唐揚げ等作ってくれて味も最高でした。
 
自分にとっては本当にまるで恋人と過ごすように楽しい毎日で、ケアンズ近郊にあるキュランダという熱帯雨林ジャングルの観光地に行った時に、狭くて歩きにくい悪路を通る時には勇気を出して初めて手をつないで歩きました。
もうその頃には自分のさゆりに対する恋心が大きくなり、純粋にさゆりのことが好きになってしまいました。
 
 
ただ、1つ謎な所がさゆりにはあって・・・
毎日ではないですが、2人で夕食を作って食べてそれからしばらくすると夜の9時過ぎには「おやすみ」と言っていなくなるのです。
どうやら部屋に戻って就寝しているのではなく外出しているようでした。
 
当然、不思議に思うので・・・
 
「晩ご飯食べてからどこかへ行ってるの?」
 
と聞いてみたのですが
 
「・・うん、ちょっとジュース買いに行ったりね」
 
さゆりからはそれだけの返答・・・
 
何をしているのかは謎ですし、とても心配で知りたくもあったのですが・・まだ恋人になれた訳でもないですし、何か事情があるのかもしれないと考えてまだそっとしておく事にしました。
ただ、いつも2人でいる事が出来るしとにかくその時間がとても幸せでした。
 
 
そしてそんな日々がとりあえず1週間程続き、いよいよ2人でスキューバダイビングのライセンスの獲得へ!
 
ライセンス取得にはまず、学校に行って午前中は授業で午後はプールでの練習が3日間続きます。
そこでの筆記試験とプールでの実技試験に合格すると、いよいよケアンズ近郊の海域のグレートバリアリーフの船上で3日間生活して、そこで毎日3回のダイビングも行ない、全ての課程が終了するとライセンスも獲得出来るわけです。
 
嬉しいことにさゆりは、当初の予定よりもオーストラリアの滞在日数を延ばして、スキューバダイビングのライセンスを取ってから1週間くらいゆっくりして、それから日本に帰る事にしてくれました。
 
2人で学校へ通い始めました。
想像していたよりもライセンス取得への道のりは厳しく、授業では毒を持っている危険な魚などを覚えたり、潮の流れや海底の地形等の海に関しての知識、ダイビングに必要な機材への知識など勉強しなければいけないことはたくさんありました。
もちろん講義は日本人の先生が日本語で教えてくれるので語学の心配は無く、ライセンス取得に来ている人は約20人程いましたが、短い日数の観光旅行で来ている家族だったり、自分と同じように旅で来ている人など老若男女様々でした。
 
教室で授業を受ける学科も大変でしたが・・・プールでの練習はもっと大変で、まず泳ぐ練習から行なうですが、普通に200mとか300mとか連続で泳がされたりします。
それから潜る練習・・・30kgとかあるタンク等を体に身につけての潜水は、思った以上に体力を使いかなりのハードでした。
プールは3mの深さでそこまで潜るのですが、そのたった3mでもかなりの水圧を受け耳抜きが出来ずに耳が痛かったり、呼吸が上手く出来ずに苦しかったりと、改めてこれはスポーツなんだなぁと実感しました。
 
男で一番体力がある年頃の自分がそうでしたから、年齢が高い人や女性の人達がつらいのは当然で・・・さゆりも本当にきつそうでした。
 
プールでの練習の一つで、底まで潜ってそれから水中でクルクルと何回もでんぐり返しをするのですが、それがさゆりは上手く行かずにプールから上がった後は顔も青ざめて喋る気力も無くとてもつらそうで心配になりました。
 
「さゆり・・・大丈夫? 本当にきついんだったら無理をしなくてもいいんだよ」
 
と、何度も言葉をかけるのですが・・・
 
「大丈夫!このためにオーストラリアまで来たんだから・・・あたし絶対に諦めないよ!」
 
さゆりはとても強い思いでした。
 
 
学校での3日目、最終日の実技試験の中に『1000mの遠泳』と『10分間の立ち泳ぎ』が行なわれました。
最初の1000m遠泳ではまず自分がクリアをして、それから次のさゆりの番では応援の気持ちを込めてずっと見つめていました。
 
所が!
まだ50mプール3往復目の辺りで、急にさゆりが一瞬溺れたようになり沈んでしまったのです!
 
僕は閃光のごとくの速さで瞬時に判断し、講師や監視員よりも誰よりも速くプールに飛び込みました。
 
 
旅路での恋(7)につづく・・・
 
旅路での恋(4)のつづき
 
 
翌朝8時に起きてから改めてさゆりを探し始めました。
 
まずはユースホテルの広い敷地内をもう一度探します。
もしかすると部屋で寝ているのかもしれないので、勝手に全ての部屋にも入って一つ一つベッドも見て回って確認しました。
 
しかし・・ユースホテル内にさゆりはいません。
 
仕方ないので外に出てひたすら歩き回りました。
まだケアンズの街の地理も分かりませんが、彼女が行くかもしれないと考えれる日本人向けの観光コミュニティセンターやショッピングモール、公園や海岸沿いの散歩道など。
 
太陽の日差しが強く熱帯気候特有のかなりの蒸し暑さなので、ただ歩いているだけでも体中から汗が大量に吹き出ます。
 
もう午後に入りある程度の場所は回ってからは、もう一度エスプラネードという名前の海岸沿いの散歩道に行きベンチに腰掛けて休んでいました。
 
 
ケアンズは特殊な海で干潟なために海岸にはほとんど砂浜がありませんし、泥の海が広がっているので泳ぐ事も出来ず、もちろんサーフィンも出来ません。
ですから海岸から眺める海の景色も良くはないです。
 
なぜそんな環境かというと大陸から数十km離れた先にはグレートバリアリーフという世界最大の珊瑚地帯があります。その珊瑚地帯が遠い海洋からの大きな波を遮り吸収してしまって、大陸には波が来ずにただ海底の泥だけが押し寄せられて蓄積しているらしいです。
 
 
そんな日本の故郷のムツゴロウがいる有明海の干潟にも似た海をしばらく眺めていると・・・
 
「ツカサ♪」
 
突然の自分の名前を呼ぶかわいらしい声・・・
その声の方を向くと、さゆりが無邪気な笑顔で手を振りながら近づいて来ていました。
 
遠い南半球の見知らぬ土地で知り得た人ともう一度出会える・・。
心の奥底から喜びが込み上げて来ます。
 
「さゆり!!よかった〜会えて!かなり探したよ!」
 
「そうなんだぁ・・ゴメンね。ツカサは今日ケアンズに来たの?」
 
「いいや、昨日の夕方に着いて・・それからすぐYHAのユースホテルにチェックインしてそしてずっとさゆりを探してたよ・・」
 
僕は照れながら言いました。
 
「本当にゴメンね。あたしももちろんそのユースホテルにいるんだけど、昨日は知り合った観光客の人に船で離島に連れて行ってもらって今朝帰って来たんだ♪」
 
知り合った観光客・・・誰?
なんだかよく分からないフレーズが出て来ましたが・・あまり深入りはせずに・・・何はともあれさゆりと再び会う事が出来たのでよしとして喜びを噛み締め、それからは2人でランチに行って初めてゆっくりと話す時間を楽しみました。
 
その楽しい会話では、僕はとにかく自分の事をたくさん知ってもらおうと・・故郷の熊本の事、サッカーが大好きな事、昔からバンドなど音楽をやっている事、オーストラリアに来た目的そして来てからのシドニーでの生活の話などたくさん伝えました。
 
さゆりはどの話にも嬉しそうな笑顔で興味津々と聞いてくれました。
そしてケアンズに来たお互いの目的でもあるスキューバダイビングのライセンス取得も一緒に行く約束もしました。
 
更にさゆりから・・・
 
「あたし一応女の子だし1人で心細いし・・日本に帰るまでのオーストラリアにいる間は・・・ツカサがよければずっと一緒にいて欲しいなぁ♪」
 
さゆりは少し恥ずかしそうにもなんともいじらしい笑顔でお願いしてきました。
 
「・・・もちろんOKだよ!」
 
僕は冷静を装って返事をしましたが、座っている席のテーブルの下では握り拳でガッツポーズをし、なんだかすごくイケそうな気がしました・・・。
 
 
旅路での恋(6)につづく・・・
プロフィール
HN:
Tsukasa
性別:
男性
職業:
会社経営
趣味:
楽曲制作
自己紹介:
福岡、熊本を中心に音楽活動してます♪
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