レザーのジャケットはおって♪
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旅路での恋(6)のつづき
溺れたさゆりを助けるためにプールに飛び込み、死に物狂いで泳ぎました。
スキューバダイビングの演習用のプールなので深さは3mあります。
飛び込んでからまったく息継ぎもしないでさゆりの元へたどり着きましたが、さゆりは底まで沈んでいてとても苦しそうにしていました。
すぐに体を抱き寄せて上まで連れて行こうとしましたが水圧も強くて思った以上に力が必要で、一瞬手間取っていると講師と監視員の手がさゆりの体を補助して持ち上げ、すぐに水上まで上がりました。
そしてプール脇にゆっくりと寝かせました。
「さゆり!大丈夫か!?」
さゆりは意識はしっかりとあり激しい咳をしながら飲んでしまった水を吐き出していたので、とりあえずは大丈夫そうでしたが、それとは別に胸の辺りを手で押さえ・・・とても痛そうで苦しそうでした。
「どうした!?胸が痛いのか?」
溺れた事によって痛んでいるのではなくて、溺れてしまった原因のような感じでした。
それを見て監視員が救急車を呼ぼうとしましたが、その時さゆりが・・・
「・・くすり・・・・」
と、苦しそうにも言葉を絞り出しました。
「薬? 薬がいるのか?」
改めて聞いてみると・・
「・・バッグの中に・・入ってるから・・・」
そう聞いて薬が必要だと悟り、講師と一緒にダッシュで更衣室まで走りさゆりのバッグごと持ってきて、中を探してみると割と大きめの薬用のケースが見つかり、中には3種類のカプセル錠剤がありました。
「さゆり!どれ?」
と、聞くと・・・
「・・全部・・・」
監視員が持って来たミネラルウォータのペットボトルで薬を飲ませると、しばらくしてからさゆりは落ち着いて来ました。
そして講師と監視員が
「とりあえず病院に行こうか?」
と病院に連れて行こうとするのですが、さゆりは
「大丈夫です。薬飲めば治りましたし、病院は行かなくて大丈夫です」
と病院に行くのが嫌がっているようでもありました。
病院に行くのを拒みさゆりは学校内の休憩室のベッドで休みました。
僕も付き添いをしようと一緒にいましたが、さゆりから
「もう全然大丈夫だから、ツカサは試験を続けて受けてて・・・あたしもすぐに行くから」
さゆりが笑顔で「心配ない」とそう言うので、僕はとりあえず10分間の立ち泳ぎの試験をクリアして終わらせてから戻りましたが、さゆりはもう試験を受け直そうとプールへ向かっていました・・が、講師は今回は中止だと言ってさゆりを引き止めています。
さゆりは執拗に再試験を受けさせてくれとお願いしていますが、講師はかたくなに拒否していました。
それでもさゆりは泣きながらお願いしていますが、さゆりの身体の事を考えれば講師が中止させるのも当然でした。
どうやらさゆりが言うには、生まれつき心臓が弱くてたまに痛みが起きた時にだけ薬を飲んでいるそうです。今回はたまたま泳いでいる時にその痛みが起きたという事のようでした。
僕もさゆりの所へ行き今回のスキューバダイビングのライセンス取得を諦めるように説得しました。
さゆりは泣き崩れていましたが、試験を合格出来ておらず講師がOKを出してくれるはずもないですし、この後に船でグレートバリアリーフに出発する前には非常に細かい身体検査もあります。
こういう事があってさゆりが海で20mまで潜るのを、医者が了承してくれるはずも無いでしょう。
それからさゆりを連れてユースホテルまで戻りました。
もう時刻は夕方になり日もだいぶ落ちて来ました。
さゆりはまだ泣いています。
「さゆり・・・俺も今回は海に行かないからまた今度改めて一緒にライセンス取ろうよ」
僕自身、さゆりを置いて1人でグレートバリアリーフの海に行く気はまったくありませんでした。
でもさゆりは・・・
「なんで!?あたしはいいからツカサだけ行って来てよ!あたしなんかに付き合うことないよ」
「でも俺はさゆりと一緒にグレートバリアリーフで潜るのを楽しみにしてたし、一人なんかで行ってもおもしろくないからいいよ・・・だからまた来年でも再来年でもいつでもいいから、また2人で一緒に来ようぜ!」
「そんな・・あたしのせいで・・せっかくツカサは授業も演習も頑張って合格したのに、それにお金まで無駄になって・・・」
「本当に気にしなくて大丈夫だって!また今度ゆっくり時間かけて頑張ろうよ!」
僕はなんとかさゆりを励まして、本当に心からまた2人で来ようと思ってました。
「・・・でも・・あたしはもう来れないよ・・・」
さゆりがそう呟きました・・・。
「えっ!?もう来れないって?」
そう聞き返してみましたが、さゆりは無言のままでうつむいていました。
それからしばらく沈黙が続きましたが、急にさゆりは笑顔になって
「お腹すいたねぇ、何か食べに行こう♪」
いつもの笑顔で明るくて元気なさゆりに戻ったようでした。
それから2人で近くのレストランで楽しく食事をして、帰りには夜の海岸沿いの散歩道(エスプラネード)を2人手をつないで歩きました。
所がそんな2人の幸せな空間を邪魔するかのように、何やら前方からニヤニヤとした怪しげな男2人がこちらに向かって近づいて来ました・・・
旅路での恋(8)につづく・・・
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