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レザーのジャケットはおって♪
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孤独の中の鏡面<7>のつづき・・・


街路樹の銀杏の葉も落ち、せわしくなり始めた12月・・・不思議と秋の期間が毎年短くなっている気がする。
そんな事をおぼろげに思いながら、由実へのクリスマスプレゼントを買いに1人で車を走らせ出かけているのだが・・・何故か由実は自分で選んだ物をもらうのではなくて俺が選んだ物が欲しいと言う。
「好みの物でなかったらどうする?」
そう尋ねたのだが・・・
「選んでくれた物が好みだから」
なんだか嬉しくなる様な言葉でもあるのだが、指定されたものではなくて選ばなければいけないとなると様々なプレッシャーが発生する。
服にしてもアクセサリーにしても選ぶセンスが問われるし、何よりどの程度の値段設定にするのかが考え込んでしまう。
出来るだけ金額を抑えたリーズナブルな物で済ませたいという本心はあるのだが、プレゼントしたものをチープと取られて落胆させてしまう事は避けたいし、少々無理をして高価な物を買い与え一回り程年下の由実に見栄を張りたい気持ちも当然ながらある。

「なんでこんな事で頭を悩ませてるんだろう?」

若干苛つきながら渋滞中の車のガラス越しに見える繁華街のクリスマスイルミネーションを恨めしそうに眺めていると、携帯電話に東京の渡辺から着信があった。

「もしもし!やりましたよ!採用ですよ!」

いきなりのハイテンションでの抽象的なフレーズ並びだが、何の事を言っているのかは即座に理解出来た。

「マジか? 曲、大丈夫だったのか?」

「はい!ジャニーズの方に聴いて選んでもらった所、1曲だけですけどすごい気に入ってくれてその曲が採用です」

そう言われて一瞬、何故か嫌な予感がした。

「1曲ってどれ?」

「えっとですね・・・最後に送ってもらってた曲で・・・『With You』でしたかね?」

嫌な予感は的中し自分の顔の表情が即座に曇って行くのが分かった。

「そっかぁ・・・あの曲か・・」

「いやぁさすがですね! 僕は4曲ともいいと思ったんですけど、あの『With You』って曲だけはまた一味違っていい曲でしたよ。ジャニーズの担当の人もあの曲だけは群を抜いてるって絶賛してましたし」

「・・・そっか、そりゃ良かった・・」

「ただですね・・・曲とアレンジはもうそのまま使いたいって事なんですけど、歌詞だけは別の作詞家に改めて書かせてくれという事で・・・それでも大丈夫ですか?」

「・・・なるほど・・そう言うのならしょうがないし、まあ歌詞はザーっと適当に書いたから変えてくれて全然いいよ」

「すいません・・・まあ作詞の分の印税は無くなってしまいますけど、曲だけ使われるのでも凄いことですよ。それで、またキーの変更とかMIDI音源の受け渡し方とかの詳細は決まってから改めて伝えます。多分、色んな権利関係の取り決めとかレコーディングの準備も年明けになるとは思いますけど・・・分かり次第すぐ連絡しますね!」

「わかった・・・色々ありがとうな」

渡辺には丁重な想いを込めて、相手が電話を切ってから自分の電話を切った。
しかしながら衝撃の喜びと驚きは当然ながらあるのだが、かなり落胆してしまう悲しい現実にも直面した。

ジャニーズ事務所がリリースする歌の楽曲として採用してくれた曲は「With You」のみ、その曲は突然自分のパソコンのデータの中に音源として表れたどこの誰が作ったか分からない不可思議な曲。
当然ながら自分で作った曲ではない・・・
きっと誰かにこの奇妙な現象の事を話しても笑われるだけで信じてはくれないだろうし、それに今になって「実は誰が作ったか分からない曲なんです」など話してもまったくもってしょうがない。
今後、本当に嵐などのアイドルグループが歌ってくれてリリースされ、ヒットしてしまった後にもし本当の作曲者が表れでもしたらかなり面倒な事になる。
しかしながら、現代科学ではありえない現象で起きているこの曲の誕生・・・「誰が作曲者か?」となれば神様以外には考えられない。

取りあえずそんな結論で一旦平静になると、今度はジワジワと哀しみの波が押し寄せて来た。

純粋に自分自身が作った自信作の曲はどれも採用されていない・・・それどころか作詞だけ手掛けた「With You」だが、自分なりに一生懸命書いたその歌詞さえも不採用で他の人が書く事になったいる。
結局自分の作品は何一つ選ばれていないのだ。

なんだか冷たい現実を受けて、身体中が痛い程にかじかんできた。


次回、孤独の中の鏡面<9>につづく・・・







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